ベトナム:ワークショップ in Hue(中編「ワークショップ開始!」)
中編「ワークショップ開始!」
2.ワークショップの記録
1日目 (9/6)
まずはワークショップの概要について。ワークショップに参加したのは京都精華大学の学生達とベトナムのフエ科学大学建築科の学生達である。私達はまずフエの学生4~5名、京都精華大学の学生2~3名、担当教員1名を混成した班に分けられ、共通のテーマを班ごとに調査、研究する事となった。共通のテーマとは「フエ王宮前のストリート(写真1赤丸部分)の新たな活用方法を考案せよ」といったものである。このテーマはかつてのグエン王朝の首都であり、その伝統的価値や文化を保護しつつ新たな観光資源としても活用していきたいと考えるフエ市が市を挙げてこのアイディア募集している事から設定されたものである。
さて発表された私の班のメンバーの顔触れは以下のようなものである(写真2)。
フエ科学大学:DUONG(リーダー)、THANH、THU、HUYEN
京都精華大学:池永龍弥(私)、柴田悠生(京都精華大学マンガ学部二年)
担当教授:Troung先生
実はこの中のDUONG、THANHに関しては前日9/5に催された食事会で一度交流をしており、同じく日本メンバーである柴田先輩に関しては私とは違った得意分野(イラストなど)を持っていたため、私はいいメンバーが集まったなと感じていた。
全体でフエ市に関する講義を受け、6人で顔合わせをした後私達は早速肝心のストリートに足を運んでみる事にした。足を運ぶと言ったがこの4日間私達日本の学生を運んだのはベトナムの学生達のバイクである。ベトナムでは人々はその交通手段としてバイクを最も多く使う。街を歩けば車よりもバイクが道路を滑走している姿を見る事が出来る。そのためフエの学生達も自分達の所有するバイクを各々持っており、通学を始めとした移動の際にはそれらを用いる。そのためこの4日間私達日本の学生がワークショップのために活動拠点であるフエ科学大学まで通学する際や、ある地域を視察する際は彼等のバイクに一緒にまたがらせて貰える事となった。いわゆる”ニケツ”である。
ニケツで向かったストリートでの視察を経て私達が着目したのは「ストリート上にある4つの空きスペース(写真3)、途中にある大きな西門、長い道路、立ち並ぶ個人商店(写真1再掲)」の利用、再開発とそれによるストリートの活性化である。
また私達はここにフエ市の求める「伝統的価値を保護し観光資源としても活用する」といった要素も含めていきたいと考えた。しかし初日様々なアイディアを主に私と柴田さんで提案したのだがそのほとんどがフエ市の規定する条例(建物の高さ制限や使用が禁止されたストリートの箇所)に抵触していた事から却下となってしまった。
またフエの学生達からはなかなかアイディアを聞き出す事は出来なかった。それは知り合ってまだ浅く議論しあえるような関係を築けていなかった事と共に、英語で対話する事で生じるある問題が原因であったように思う。ある問題とはベトナム英語と日本英語のイントネーションの違いである。つまり互いに英語を話していても自分達とはイントネーションが異なるため、相手の英語を完璧に聞き取る事がお互いに困難なのである。そのためどうしても伝わらない場合にはスマホの翻訳アプリを利用する事となるためどうしてもそこに時間的なロスが生じてしまい円滑なコミュニケーションが難しかった。
更に問題なのが、こういった事から私は自分の思っている事を口に出して相手に伝えるという事を自分でも気づかない内に尻込みしてしまうようになってしまっていたという事である。そしてそこから生じるお互いの思考のズレや齟齬が今後の活動に少なからず悪影響を起こしていく事になる・・・。しかしそんな中でも私が提案した「西門でプロジェクションマッピングを行う」、「個人商店でスタンプラリーを行う」、「フエに住む若手アーティスト達によるアートギャラリー」というアイディアには好感触を持ってくれた。そうして1日目は上記3つのアイディアをひとまずの候補とする事で終わった。
2日目(9/7)
2日目は朝から再度ストリートに足を運んでみる事にした(勿論ニケツで)。ストリートを再度視察した後私達はストリート上にあるカフェで議論を交わした。余談だがベトナムではカフェ文化が浸透しているらしくバイクと同様に沢山のカフェが街には立ち並ぶ。特にフエではコーヒーが特産品となっておりカフェの数の多さもひと際目立つ。
前日にフエの学生からのアイディアを聞き出せなかった事を省みて今回は彼等と積極的にコミュニケーションを行う事に努めた。また2日目という事もあり彼等も昨日より積極的に私達の話を聞いてくれた。その結果彼等から「4つのスペースを使ってフエの伝統文化に関する展示会、販売会を行う」「道路の頭上をベトナム伝統のランタンで装飾する」といったアイディアを聞き出す事が出来た。また展示会、販売会を行うフエ伝統文化の例としてはフエの伝統陶芸品、フエの伝統絵画、ベトナムの伝統凧が挙げられた。
そして私と柴田さんはこのアイディアから、日本・京都の伝統文化をベトナム・フエの伝統文化と共に展示し紹介してはどうかという提案をした。この案には好色を示してくれて、最終的に私達は「4つのスペース=フエ(ベトナム)と京都(日本)両都市の伝統文化紹介」「大きな西門=プロジェクションマッピング」「長い道路=ベトナムの伝統ランタンで装飾し彩る(写真4)」「個人商店=スタンプラリーの開催」という案で進めていく事に決めた(アートギャラリー案は後述するアートスペース案に転用)。
ここまで決まってからカフェを出た後、彼等は私と柴田さんに一緒に近くのマーケットに昼食を食べにいかないかという誘いをくれた。私がOf courseを三回程連呼した後、私達はマーケットへ向かった。マーケットには食べ物屋、ベトナム伝統傘屋、お土産屋、雑貨屋など多様な店が立ち並んでおり生活感溢れるその光景に私の血肉は湧き上がった。
私達はある食べ物屋でベトナム料理を食べた後、今度は大学でより具体的で詳細な案を練る事にした。大学での案練りには私達の担当教授であるTroung先生も参加してくれた。先生は私と柴田さんに積極的な発言を促し、私達の提案を親身に聞いてくださり、更にその案をより発展させるためのアドバイスまで下さった(写真5)。
そのお陰もあって私達は4つのスペースで紹介する京都(日本)の伝統文化のアイディアを創出する事ができ、4つのスペースの具体的な活用案は以下のようになった。
⑴陶芸スペース(フエ伝統陶芸品と清水焼の展示)
⑵凧屋(ベトナム伝統凧と和凧の展示、販売)
⑶アートスペース(フエ伝統絵画、京都伝統絵画、京都出身アーティストによるアニメ系イラストの展示)
⑷茶屋(宇治茶を楽しめる和風茶屋スペースの構築)
その夜、リーダーであるDUONGがそれぞれのメンバーのプレゼン資料作成の際の役割分担を私達全員にInstagramで送ってくれた。
またしても余談だがベトナム人の学生は主にZalo(ベトナム版LINE)、Facebook、Instagramのいずれかで友達と連絡を取り合っているようであった。そして私の役割はそれぞれの日本文化の概要や詳細な情報を調べてまとめる事となった。
池永龍弥




